新着文献
一覧はこちら
文献紹介:2026年
<2026年2月 文献紹介>
Frequency and Correlates of Financial Distress in Patients with Advanced Cancer
Tschanz J, Khan R, De La Cruz M, Chen M, Bruera E. Frequency and Correlates of Financial Distress in Patients with Advanced Cancer. J Palliat Med. 2025 Dec 29. doi: 10.1177/10966218251401403. Epub ahead of print. PMID: 41472637.
tschanz-et-al-2025-frequency-and-correlates-of-financial-distress-in-patients-with-advanced-cancer
1)論文の概要要性
Tschanzら(J Palliat Med, 2025)は、進行がん患者における「経済的苦痛」(治療費負担や収入減などがもたらす生活上のストレス)の頻度と関連因子を検討した横断研究である。米国MD Andersonがんセンターの支持・緩和ケア専門外来で成人の進行がん患者509名を対象に調査を行い、140名から回答(回答率28%)を得た。評価はthe InCharge Financial Distress/Financial Well-Being Scale(IFDFW)(8項目、1=強いストレス〜10=なし、平均≤4を高苦痛)を用いた。高い経済的苦痛を有すると評価された患者は25%(35/140)であった。高苦痛群の要因は若年、非婚、フルタイム就労が少なく、低所得(年収<$40k)であった。一方、がん種、治療法、保険種別とは有意な関連がなかった。患者報告アウトカム(PRO)として、症状評価ESAS-FS、経済的負担尺度COST-FACIT、QOL尺度FACT-Gも併用し、経済的苦痛が強いほど症状負担が高く、QOLが低い関連を示すことがわかった。さらにESASの単一項目「金銭的苦痛」(0–10)とIFDFWは相関0.6と報告され、簡便スクリーニングの可能性が示唆された。著者らは、支持療法で経済的苦痛を継続モニタリングすべきと結論付けている。
2)コメント
本研究は、支持療法外来で日常的に収集されるPROに「経済面」を組み込み、症状やQOLと同等に臨床的に重要な領域であることを示した点が実務的に有用である。短時間で患者負担の少ないESAS単一項目が拾い上げに使える可能性は、運用(一定点数で医療ソーシャルワーカー等へ紹介)に直結しやすい。一方で横断研究であることから因果関係は証明できないこと、回答率28%による選択バイアスの可能性、単施設・英語話者中心に加え、教育水準が高く保険加入率も高い集団であり、より脆弱な集団では頻度が過小評価されうる可能性もある。今後は、ESAS項目の感度・特異度、縦断での変化(治療局面や家計イベント)とQOLの時系列解析、介入がQOLを改善するかの検証が求められる。また、医療提供環境の異なる米国で行われた研究であり、わが国で同様の検討を行った場合にどのような結果が得られるかは明らかではないことから、わが国でも研究が必要であると考えられる。(T.I)