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文献紹介:2023年
<2023年1月 文献紹介>
Reducing waste in collection of quality‑of‑life data through better reporting: a case study
Quality of Life Research (2022) 31:2931–2938
https://link.springer.com/article/10.1007/s11136-022-03079-1
本研究は、選好に基づく尺度であるEQ-5Dの報告について、現状でどのように効用値が報告されているかを検討し、その状況を改善し研究の無駄を省くための戦略を提案したものである。本研究は冠動脈疾患患者を対象とし、EQ-5Dを用いて算出された効用値に関する論文のシステマティックレビューの一環として実施され、効用値とその十分な統計的詳細が報告されているかどうかを検討し、一部の論文のデータがメタ分析に再利用できなかった理由を検討した。研究の無駄は、(1)除外された論文の割合とサンプルサイズ、(2)報告不十分な論文のレビューに費やされた研究者の時間とコストとして定量化した。
研究者らの検索により5942件の論文が見つかった。タイトルと抄録のスクリーニングで93%が除外された。379の論文のうち130の論文がEQ-5Dを使用していることを報告した。そのうち46%(60/130)だけが効用値と統計的特性を報告し、メタ分析が可能であった。また、タイトルや抄録にEQ-5Dが記載されている論文は67%にとどまった。サンプルサイズとして133,298名分のデータが報告不足のため除外された。研究者の時間の浪費は、3816ドルから13,279ドルと推定された。
このようにEQ-5Dから得られた効用値のデータの不十分な報告は、潜在的に有用なデータがメタアナリシスや医療経済評価から除外され、研究の無駄を生み出す。そして尺度についての不十分な記載も、その後除外される系統的レビューのための論文のレビューに費やされる時間が増えるため、無駄を生み出す。
これらの研究の無駄を減らすためには、EQ-5Dを用いた研究では、メタアナリシスでの再利用や医療政策のためのより確かなエビデンスを得るために、適切な要約統計とともに効用値を報告する必要がある。他の研究者が見つけやすいように、現在の報告ガイドライン(CONSORT-PROおよびSPIRIT-PRO Extensions)に沿って、タイトルまたは抄録でHRQOL尺度を報告することを著者に推奨する。また、先行研究のカタログ化や検索性を高めるため、尺度についてMedical Subject Headings (MeSH)に記載することが望ましい。
【コメント】:QALYsを用いた医療経済評価においてUtilityのデータは解析に必須であるものの、論文を検索しても有用な報告を見つけられず、mappingに頼らざるを得ない状況もある。この研究で推奨された基本的なUtilityの報告とガイドラインに準拠した論文化、適切なHeadingはわれわれが論文を書く際に意識すべきであることを再認識した。(T.I)